新幹線:トンネル内停電(リスクアセス大失敗)

失敗談

姉の結納で帰省

学生時代の話です。小さい頃は喧嘩ばかりしてましたが、大きくなるにつれ仲が良くなった姉が結婚することになり実家で結納式をすることになりました。私は当時、実家から遠く離れた大学で就学中でしたが、それに併せて帰省する事としました。ただ、確か臨時補習かバイトか今となっては記憶が曖昧なのですが、それと重なりそうだったので自分の日程も確定することが出来ず、「帰る」と言って万が一帰れなくなくなると却って悪いと思い、
「帰るつもりではいるけれど、まだどうなるかちょっと解らない」
というあいまいな返事をしていました。これは当時の私なりのリスクアセスだったのですが、
姉は
「O-Chanは冷たい。一人しかいない姉の結納式に参加出来るかどうか解らないという返事だ」
と父親に少し文句を言っていたようです。父親は
「O-ChanはO-Chanなりに考えているよ」
と姉に話していたようです。
今となっては父親がそう言った真意は確かめる術もありませんが、もしかしたら父親は私の性格を見抜いていたのかもしれません。

歳を取って学んでの反省なのですが、こういう時は
「了解。何が何でも帰るよ!」
と言う返事をした方がずっと良いですね。
万が一帰れない場合はそれはそれで仕方の無い事。自分はそれだけ相手の事、このイベントの事を大事に思っているんだという事を言葉で伝えなければ相手に伝わりませんからね。私の取っていた態度はリスクアセスでも何でもありませんでした。(間違ったリスクアセス①)

新幹線にてトンネル内停電

さて結納式の2日前、懸念していた特別大きな用事も重ならなかったので帰省することにしました。まずは新幹線で東京まで移動、そしてその次に上野駅まで乗り継いで帰省時にはいつも使う夜行急行で帰るつもりでした。当時、帰省する時はいつも実家周辺地域の周遊券を購入して夜行急行で帰っておりました。夜の間の移動ですから1日時間を短縮できます。椅子に座ったまま夜を明かさなければいけませんが、それは若い故、体力は十分あり、自分の疲れよりもお金の方を重要視していました。帰省するには寝台特急や新幹線、飛行機等を使う手もありましたが、これらの料金は私には高すぎて、それらは、はなから選択種には入っておりませんでした。

昼過ぎに最寄駅から新幹線に乗車、時間的には上野駅でも夜行急行発車まで2~3時間程度待つ自分的にはかなりの余裕を持って出かけたつもりでした。
新幹線に乗った後はずっと文庫本(推理小説)を読んでいましたが、かなり経った時、多分三島か熱海付近でしょうか、あのあたりで幾つか新幹線のトンネルありますよね。そのトンネルに差し掛かったところで新幹線が徐々にスピードを緩めました。そしてトンネル内で完全にストップしてしまいました。車内アナウンスは
「停電の為に運航を見合わせております」

新幹線の事ですからいくらストップしても復帰までは10~20分位かと思っていましたが、20分経ち、30分経っても一向に動く気配がありません。挙句の果てには泣き出す子供もいました。
これ、ストップしたのがトンネルの中だったのが最悪です。外は真っ暗。新幹線も天井照明を落として非常灯のみ。つまり、暗くて本は読めないのです。
さらに、暗い雰囲気は心を不安にさせますね。
1時間経ち、2時間経ち
「まずい、夜行急行に間に合わなくなる・・」
しかしどうする事も出来ません。焦っても動きませんし、状況は変わりません。ただ耐えるのみです。
当時はスマホも無い時代でした。こうすると待っている時間は何も出来ないです。ただ目をつむるのみ。心なしか室内の空気も淀んできているように感じました(多分、空調設備も極力運転を制限していたのだと思います)

ずっと待たされて結局運転が再開したのは6時間後。トンネルの中で6時間立ち往生でした。ちなみに、当然ながらこのアクシデントは当日夜のTVニュースになると共に、翌日の新聞・全国紙第一面に載りました。

上野駅到着は夜行急行発車後

かなり疲れて東京駅へ到着。新幹線の特急券は払い戻していただけましたが、対応はこれだけです(ルールとしては致し方無い事)。上野駅へ移動して私が乗るはずだった夜行急行は既に発車済。これより、その日は自宅に帰る術はありません。かといって、駅前のホテルに宿泊するには私はお金を持たな過ぎました。当時、帰省をする時は極力お金を持たないで帰るという私なりのかなり偏った考え方の為でした。理由は、大都会、東京を経由する事でスリにあったり、財布を落としてしまう事が怖かったからです(本当、田舎者です。間違ったリスクアセス②)。

仮にビジネスホテルに宿泊すると、それで私が持っていた現金をほとんどはたいて宿泊することになります。すなわち、ホテルに宿泊すると翌日に新幹線や特急で帰りたいと思っても、これらに乗るお金を持ち合わせていないのです。
「普通キャッシュカード位は持って歩くだろう」
と言われそうですが、私の場合、前述したように財布をすられるのが怖くてキャッシュカードは学生寮の机の中に置いてきました。どっちみち、家に帰るだけだし、戻りの電車代は周遊券だから必要ない、実家ではほとんどお金を使う予定もない、という自分なりのお金を失わない為のリスクアセス。今になって思い返せば全く的外れの考え方でした(間違ったリスクアセス③)。

取りうる選択種

この時、私が思いつく取りうる選択種は次の2つ。

ケース1:ホテルに宿泊。持ち金的にはこれでお金を使うと翌日の新幹線、特急には乗れませんから1日遅れの夜行急行に乗って帰省。この場合、夜行急行が自宅最寄りの駅に到着するのは姉の結納式当日の朝。 結納式は私の実家で行われることになっておりましたが、私の実家と最寄りの駅とは30km以上離れております。万が一電車が少しでも遅れたら結納式には間に合いません。さらに、田舎故、当日の朝は自宅の会場設置等色々準備があり私は全くこれに手伝えない事になります。これでは何の為に帰省したのか全く意味が無いことになります。(却下)
⇒ビジネスホテルではなくもっと安いカプセルホテルに宿泊する手もありましたが、当時私は何故かどうもカプセルホテルはちょっと危ないイメージを持っていて選択種には入っておりませんでした。


ケース2:ホテルに宿泊せず、在来線を乗り継いで出来るだけ夜の間に電車内にて移動し、終電後は駅の待合室にて仮眠してホテル代を浮かす。そして翌日残りのお金で新幹線 &特急に乗って帰省する。これなら翌日中に実家に帰る事が可能です。
翌日中には帰省したいという拘りより、私の選択種はただ一つこのケース2だけでした。地元迄直通の夜行急行が無いにしても、周遊券ですから在来線と急行で地元方向へ向かる路線でしたら何度でもフリーに乗れます。

迷っている猶予はありません、在来線の普通列車、急行等を乗り継いで実家方向へ向かいました。これ、当時在来線の普通電車もかなり遅くまで運行していたんですよね。そこで、数回電車を乗り継いで、最終列車の終着駅で他の列車が何もなくなった時(多分am1:30位だったと思います)幸運にもその駅の待合室は閉鎖しなかったので待合室の椅子にて仮眠(「Freedom」の曲紹介でお伝えした、閉め出されてしまう駅とは別の駅で幸運でした)。am4:00位から始発電車が動いたのでそれに乗って更に移動。ひたすら実家方面を目指しました。

翌昼:地元の駅で

夜行急行で一晩かけて移動する距離を幾ら乗り継いだと言っても在来線での移動ですから距離はたかが知れています。翌朝時点ではまだ全長の1/4程度の移動だったかと思います。そこで翌朝の始発で新幹線の駅まで移動して新幹線に乗りました。新幹線は乗るとまあ、早い事、早い事、スピードが時間を買っていると思いました。そして当時は新幹線が今ほど全長延長していなかったので、新幹線の終着に着くなり次に特急に乗り継ぎ、昼過ぎには自宅の最寄り駅に無事到着する事ができました。この時の私の残り持ち金「80円」でした。
私の自宅は駅からは30km位離れております。普通なら更に市電とバスを乗り継いで帰省するのですが、もう持ち合わせがありません。そこで駅の公衆電話で自宅にTELして、
「駅に着いたけれど持ち合わせないから誰か迎えに来てくれないか?」
父親は不在だったため、電話を取った姉が迎えに行くと返事をくれました。

私は駅から歩いて20分位の所にある親戚の家に突然訪問。その親戚の家で迎えが来る迄暫くの間待たせてもらうこととしました。今となっては幾ら昔、そして田舎の事とはいえ、本当に親戚にも失礼な事をしたと思っております。親戚の電話番号は知らなかったので、いきなり
「こんにちは。O-Chanです。姉が迎えに来るのでそれまで待たせて下さい」
今から考えると、この親戚は小さい頃は良く行き来をしていたのですが、代代わりして息子さんがお嫁さんを迎えられてからこのお嫁さんと私は数回しか面識がありませんでした。家にはお嫁さんしかいなかったのですが、もしかしたら彼女は私の事を「誰?」と思いながらも私が随分とずうずうしく上がり込んで来たので不審に思いながらも渋々居間に上げて待たせてくれたのかも知れません。
{あ、もしかしたら記憶は定かではありませんが、私が姉に親戚の家に一報を入れておいてくれと言ったかのかもしれません。それを信じましょう}
⇒何故駅で待っていなかったかと言われそうですが、田舎の小さい駅ですし、そこで姉が迎えに来るまでの時間を待つ事自体が苦痛に思っていました。いくら若かったとはいえ、かなり疲れていたので、せめて畳で足を伸ばしたいと思ったのがありました。

そして1時間位経過した頃でしょうか、青い顔をしながら姉が車で迎えに来てくれました。そうです、姉は運転免許は持ってはいるのですが、普段はあまり車を運転しないペーパードライバーだったのです。

おわりに

私は姉の結納式前日に姉にとても大変な事をお願いしてしまいました。ペーパードライバーの姉が30Km近くを一人で運転して迎えに来てくれたことに深く感謝すると同時に深く深く反省です。これ、万が一運転に慣れない姉が結納式前日に事故でも起こしたら、それこそ大変な事態になるところでした。
最も新幹線の停電の話は翌日の新聞一面に大きく乗っていたので、自宅に帰ってからは
「O-Chanあの新幹線に乗ってたのか」
と家族から呆れられながら、感心されながら、それでも
「もう少し持ち合わせ持って出かけろ」
と叱咤も受けました。

私は
「新幹線とか寝台特急乗るはお金がもったいないし、万が一財布すられるの怖いので」
と返答すると、
「誰が在来線、夜中中乗り継いで帰ると考える?それが大変だから新幹線や寝台特急乗るだろう」
と、さらに
「お前今回新幹線乗って特急乗って、結局同じお金使っているじゃないか!」
「財布スラれたら基本的にいくら持っていても同じだろう!」
「キャッシュカード取られたって暗証番号解らなかったら簡単にはお金引き出せないだろ!」
等々、色々、当然叱咤の連続です。

返す言葉もありませんが、財布スラれた場合は多額の現金を入れておくのと入れておかないのは基本的に損失額には大きな違いがありますよね。でも、キャッシュカードは全くその通りです。グーの音も出ません。でも、もし財布をすられていたらどうやって帰って来たのでしょうか?。未だに答えは解りません。
 ⇒ちなみに周遊券は財布とは別のポケットに入れておりました(ちょっとのリスクアセス))。

 この経験から、少なくてもそれ以降はキャッシュカードは携帯して帰省するようになりました。これ、スリにあった時用の自分なりのリスクアセスが全く逆効果になってしまいました。でも・・確率的には新幹線が遅れて夜行急行に乗れないリスクと東京でスリにあうリスク、どっちが高いのでしょうか? 当時の私には東京で財布すられるリスクの方がかなり高かったと思います。実際、私の学友が何人か被害にあってもおりましたので。
 
「じゃあ、財布に全額入れておかないでバックとお金分けて持ったら良いだろう!」
って一般的には思いますよね。当然そうです。
ただ、私は大学入学時、バックにお金を入れてかなり大きな失敗をしてしまったので、それが少しトラウマになってしまい帰省時にバックにお金を入れるのをずっと躊躇っていました。今回の失敗の一因はそれもちょっとあったと思います。いずれにしても若かった時の事とはいえ、今となっては全く的を得ていない間違ったリスクアセスをしていたが故の大失敗でした。
大学入学時のバックにお金を入れての失敗談に関してはまた別の機会に。

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